1. 外国投資家による有限会社設立時の最低払込資本金の引き下げ2. 最低投資額における緩和3. 総論1. 外資投資家による有限会社設立時の最低払込資本金の引き下げBKPM規則2025年5号によって行われた最も注目すべき変更は、外資有限会社(Perseroan Terbatas Penanaman Modal Asing、以下「外資企業」)に対する最低払込資本金の引き下げです。従前、外資企業の最低払込資本金は100億ルピア(約9,000万円)と規定されていました(BKPM規則2021年4号12条7項)。しかし、新しい枠組みにおいて外資企業の最低払込資本金は25億ルピア(約2,250万円)に引き下げられました(BKPM規則2025年5号条項)。本変更により、外国投資家による外資企業設立に必要な最低払込資本金はBKPM規則2021年4号施行前、すなわち2021年5月以前の状態に戻ったことになります。2021年6月以降、最低資本金を理由にインドネシア進出を諦めてきた多くの日本企業にとって進出を再検討するきっかけとなる大きな変更です。もっとも、インドネシア特有の投資金額については引き続き留意が必要です。投資金額については次の章を参照ください。2. 最低投資額における緩和最低投資金額とは、インドネシアの外資企業が、原則として、5桁のKBLI番号及び事業ロケーションごとに実施しなければならない土地・建物を除く100億ルピア(約9,000万円)の投資のことです(BKPM規則2025年5号26条2項)。つまり、原則としては、KBLI番号や事業ローケーションを1つ追加するごとに、追加で100億ルピアの投資額が必要です。BKPM規則2025年5号は最低投資金額においてもいくつかの規制緩和を実施しています。1. 飲食業従来より1事業ロケーションごとに土地・建物を除き100億ルピア(約9,000万円)の最低投資が必要でしたが、本変更により事業ロケーションの定義が県(Kabupaten)または市(Kota)ごとになりました(同規則26条3項b、4項)。この変更により、過去は同じ県内に3店舗保有していれば店舗ごとに100億ルピア(約9,000万円)の最低投資金額が必要だったものが、同じ県内に複数の店舗を運営した場合にも最低投資金額100億ルピア(約9,000万円)のままとなり、小規模な事業者でも事業展開が実施しやすくなりました[1]。2. EV充電ステーション州(Provinsi)ごとに投資額が計算されるようになりました(同規則26条7項)。よって、同州内に小規模なEV充電ステーションを複数設置するという事業展開ができるようになり、より多くの外国投資家によるEV充電ステーション事業への投資が見込まれます。3. 資本集約型産業 原則土地・建物は投資金額に含まれませんが、以下に記載の一部の産業においては投資金額に計算されることになりました(同規則26条5項)。プロパティーディベロッパー(建設、販売、リース)短期・長期宿泊施設提供者農業プランテーション家畜生産水産養殖3. 総論投資金額要件の緩和が実施され、より多くの外国投資家がインドネシア投資を検討する契機になると考えられます。[1] 実際の事業実施においては、事業ロケーションと取得するKBLIの両側面から最低投資金額を検討する必要がある点には留意が必要です。